【広告の性善説を考える】中毒性と自動反応 脳へのアプローチ

なんとなく考えていることを書いてみる。

いつもの通り、内容に関しては本などで整合性をとってから書いているわけではないので、内容の正確性などは保証しません。またあくまで個人の見解であり所属する団体には関係ありません。

最新技術、表現はアダルト業界から始まる、というのはよく聞く話だと思う。
最近だと、VR動画は凄いクオリティになっているし、3DCGのリアル感も凄い。また技術もさることながら、企画内容や設定、タイトルの付け方なども、正直凄いと思うことばかりだ。広告業界で働いたことのある人なら、週一でアダルト勉強会というのを開いてもいいくらいだと思っている。

その一方で、アダルト系のいかがわしいサイトにPVが集まるのは、上記のようなコンテンツ力や表現力のおかげなのだろうか?おそらく殆どの人が”エロだからだろ”と言うはずだ。そのくらい”エロ”自体に人を引きつける力がある。

アダルトは特別なのか?

上で挙げたアダルトには、”中毒・依存症”、”自動化”という動物特有の行動原理が嫌になるほど働いていると思う。これは後で説明するけど、論理的に考えるのではなく、脳に直接アプローチするやり方だと思っている。ではアダルト商品だけが特別なのだろうか。実は白米やケーキ(GI値が高い食品)も直接アプローチするという意味で僕は同じと考えている。そして今後こういう脳ちょくアプロ-チのやり方は増えていくと思っていて、特に最近だと
・ソシャゲ
・SNOW、tiktokなどAR系
・多カットと多セリフに編集されたYouTubeなどの動画コンテンツ
ココらへんは既に日常的に脳ちょくで攻められているコンテンツだと思っている。

中毒、自動化とは何か、その仕組み

そもそも中毒とは何か、について考えたい。
中毒とは、その行為をしなかった場合に虚無感や焦燥感などの、マイナスな感情が発生してしまう”脳になる”こと。そしてその行為を行ったとしても、大して幸福感を感じないのが特徴。

では、そもそもなぜそんなことになるのだろうか。仕組についてざっくり解説したい。

まず、生物の行動原理から考える。生物の最大の目的は、リチャード・ドーキンス先生によれば自分の遺伝子の複製だ。ざっくり言えば子孫を残すこと。子孫を残す為に食事をして、子孫を残す為に睡眠をとって、子孫を残す為に群れのボスになろうとする。これはなんとなく生物の話っぽいが納得だろう。
利己的な遺伝子 40周年記念版 
リチャード・ドーキンス

では、この時、頭の中では「子孫を残すからそろそろ寝るかー!」とか「子孫を残すから飯くおー!」となっているだろうか?多分そんな計算高い人はあんまりいない。頭の中では単に「気持ちいいー!」となってだけだ。眠る直前は気持ちよくなるし、ご飯を食べると幸せだろう。人から褒められたり崇められるのは、得も言えぬ気持ち良さがあるはずだ。
ここでこの現象をもう少し細かく説明すると、頭の中ではアドレナリンやドーパミンに関連するVTA(たしか)とかいう報酬系が活性化して、”気持ちいいホルモン”が多くなっている状態になる。つまり脳は、生きることや、子孫を残す為に有利になりそうなことに対して「気持ちいい」という報酬を与え、もっとやれ!またやれ!と命令しているのだ。

なんとも残酷な実験があるのだが、頭に電極をぶっ刺されたマウスは、自分でボタンを押すことで電極に電流が流れ、直接的に報酬系が活性化されるような仕組みに繋がれた。このマウスは、近くに異性が来ても、ご馳走があっても、睡眠も取らずに死ぬまでボタンを連打し、死んだそうだ。

頭の中では、報酬系が活性化されること = 生存や生殖に好都合な出来事 と判断されるようなのだ。

では、毎日「中島さん、まじすごいっすねー!」と言われて、毎日ハッピーな気持ちになるだろうか。多分2,3日間は「うれぴー!」となるが、その後はならないだろう。でも、毎日褒めてくれていた人が、いきなり褒めてくれなくなったらどうだろうか?僕は「さみしー!」となると思う。脳でもこれと同じことが起こる。毎回報酬系が活性化していると大変だ。また毎回同じことで満足していたのではリスクが高い。違うものにも興味をもたせる為、脳は「気持ちいいー!」を「当たり前」にしてしまうのだ。そしてその行為をしない時には・・・「さみしー!」になるのだ。少し違うが、記憶でも重畳効果というのがあり、同じようなことは忘れてしまう。脳は、できるだけ効率的に生存と生殖の確率を最大化させようとするのだ。これが中毒や、依存症の仕組み。

詳しくはこれがおすすめ
快感回路—なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫) 
デイヴィッド・J・リンデン

また自動化とは、希少性や返報性、一貫性や権威など、簡単にバイアスがかかりよく考えないで行動することを、ここでは指す。例えば、ランチに出かけた時に、行列ができているラーメン屋があったとする。さらに看板には「10食限定!ラーメン王も認めたチャーシューメン」という文字が。こういうことはよく目にすると思う。

ここでは心理的なテクニックを説明したいのではなくて、中毒と同じように脳みその中の理解だ。自動化は基本的に脳のエネルギー消費を抑えることが目的で発生する。
人間の中で一番カロリーを使うのは脳だ。だから人間は考える動物ではなくて、できるだけ考えずにすごしながら、必要なときだけ考える動物なわけだ。誰しも経験があると思うが、考えることは通常”苦痛なこと”だ。なぜなら脳がそうしているから。「人は考えるという真の労働を避けるために何でもする」的なことを、確かエジソンだか違う人が言ったという話もあるくらい、脳は節約思考なわけだ。

自動化についてはここらへんがおすすめ
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか 
ロバート・B・チャルディーニ

広告ビジネス

広告には、上で挙げたような自動化テクニックが乱用されている。乱用されているからこそ、効果がどんどんなくなっている、と個人的には思っていて、例えば数年前までは口コミ1位というクリエイティブファクトを取る為に凄いお金を掛けていたけど、今では”〇〇一位”なんかのバンドワゴン効果的なアプローチは使い古された感が否めないし、誰も信用しなくなった。”〇〇監修”なんかの権威付けも同じだ。この流れとしてはライブ配信で買わせるのが一番今旬なんじゃないかと思うけど、その一方、まだまだ中毒的に脳へアプローチする方法は取られていない気がする。そして、中毒はどちらかと言うとプロダクトの方に浸透、というか勝ちパターンとして入り込んでいる気がする。つまり以下に脳を使わせないで短期的に報酬系を刺激し、時間と金を使わせられるかの流れ。

特に上で挙げたココらへんは、まんま中毒だと思っている。
・ソシャゲ
・SNOW、tiktokなどAR系
・多カットと多セリフに編集されたYouTubeなどの動画コンテンツ

ソシャゲは言わずもがな、短期スパンで興奮を刺激していて、タバコのような中毒特性だと思う。SNOWしかり、tiktokなんかは、もう鏡の役割だと思っている。あれ越しにしか世界を楽しめない人も多いと思うが、完全に自分の顔を綺麗に見せ、世界を楽しそうな雰囲気にフレーミングしている。手放せない魔法の鏡だと思う。多カットと多セリフに編集されたYouTubeなどの動画コンテンツは、最近の動画編集の流れだが、情報量自体は多いのかは微妙だ。代わりに音、色、角度などのエフェクトが凄まじく変わり、常に新しい刺激を与えている感じに思える。

上記を踏まえて、これからの広告の形態がどうなるのか、を考えたときに、より中毒的なアプローチになると思っている。でもクリエイティブで中毒にさせるには厳しいので、ソシャゲの中の興奮状態の時にゲームアイテムとして露出し、買わせるとか、SNOWの中でARとしてアイテムをキラキラさせブランディングを図るとか、Youtuberがめちゃ早なコマの中で「とにかく買って買って今すぐ買って、まじこれまじいいから」を連呼しながら買わせるみたいなのが増えそうだと思っている。いかに快楽状態の時に接触するか、決断させるかの勝負になると思う。こういったことがウェアラブルデバイスでリアルタイムにデータが取れるようになってくると面白いなと思う反面、無意識時に攻めるかということを考えて、頭をジャックするかという方向性にふると、なんだかなーとは思ってしまう。

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